腎臓癌。
2007年5月発見。
8月に入院手術。

ひと夏の思い出を記録。

って、完結してるのか？？

「へえーーー！」とか「ほっほぅ〜」なんてのが確かには憶えてないけど
最初の感想だったかなあ。。。国内死因の第一位になったらしい悪性腫瘍≒癌。
まさか自分が喰らうとはね。

大体が厄介事ってのは突然に襲来するもんだからこれも見方によっては
アタリマエの展開かも。随分と昔に庵主の朋友、本文で所々に登場する
Ｄｒ.ＫＴからの「悪性新生物というのは本当なんよ。自分の体の中に
タチの悪い別の生き物が育っているようなもんやね」との言葉を憶えとります。

でもね、まあ今回のは「体験記」で別コーナーにある網膜剥離の「闘病記」とは
ちょっと違うの。目の時は本当に一時は失明状態だったから気分的に
病気と戦うという感じだったな。入院も初体験だったし。
（ただ困った事には最近、見え難さが進行している）

今回は自覚が全く無かったし焦燥感そのものがここまで無縁だったので
闘病という重苦しい雰囲気が無いのよ。なので何となく一つの体験と言う程度ね。

それで重要なのはあくまでもこのコーナーは主観的な感覚で書いた
個人的記録と言うもの。自分なりに調べたり専門家の話を聞いての記録でも
結局それはこの分野の素人記述だから医学的に正確であるとか他の症例に
あてはまるとか、あるいは同病者の参考にしてもらうとか、
そんな事は全く考慮されてません。（ココ重要）

もしかしたら当人、知人で同じ疾病を患う人には不愉快な表現だって
あるでしょね。書いてるのがこの庵主だから。
ただ自分もこの病を間違いなく体験した一人なのでその当事者が思う事を
正直にそのまま記録したものだと承知して暇つぶし程度に
（それがこの場全体の主題）読んでもらえたら良いかなと。

　　以下　2007.8.22UP分
＜御急ぎの人に、ダイジェスト版＞

後日に詳細や個人的感想（但しこれは訪問された人々全てに
庵主が本音で思う事としていずれ是非、御一読願いたい）はＵＰするとして
ココでは今後の本文と重複するだろうけど退院１週間時点での
内容を要約しておきますかね。

何だったの？
→会社の休業用に提出した一般的診断書では「左腎癌」とだけ記されとります。
手術前に説明を受けた際には「ＣＴでは腎癌の特徴的な所見がある。しかし
腎細胞癌に多く見られる淡明性腎癌とはどうも違う。ＭＲＩでは腎癌と出血性
腎のう胞の両方が50％−50％で考えられ摘出してみないと分からない」と。
結果的に　のう胞周囲部分が癌化していたそうで嚢胞性腎細胞癌の類らしく。
ちなみに主治医から聞くには泌尿器科の癌の中で腎細胞癌は年間３０例くらい
手術しているそうだけど自分のような症例の患者は初めてだったとか。。。

いつ分かった？
→不確定ながら初めて指摘されたのは2007.5.15のＰＥＴ検診（下記注）で。
　この結果の受領は2007.5.23に。
　その後2007.6月に地元医大病院で造影ＣＴ、造影ＭＲＩの結果から
　腎細胞癌じゃないの？ってね。

ＰＥＴ検診：どんな事をやってるか興味のある人は　http://www.hmp.or.jp/　を参照あれ。

いつからだった？
→ＰＥＴ検診は今年で４回目。個人的な関心と仕事柄、毎年５月頃にやってます。
　昨年には所見ナシだったんでこの１年間の出来事となりますな。
　一年でこういう状態になるのが早いとみるかどうかはチョット判断できないね。
　ただ今年の結果から昨年のデータを見てみるとよく分からんがソレらしき兆候も
　有るかもしれない（非常に曖昧）感じがするとのこと。
　但し昨年の時点で癌化していたかどうかは不明。

手術はどこで、どんな内容？
→九州がんセンター。
　最初に診断を受けた地元医大では左腎を全摘出するってんで第一印象は
　病気そのものよりそっちの方が嫌だったな。
　高校時代からの友人Ｄｒ.ＫＴに相談した時にはそれが基本だと言われたっけ。
　こうなると覚悟して（？）健康上の理由で自分が何かするなら福岡しかない、と
　以前から決めていたから手配を御願いした結果と彼からもらったMAILで
　「餅は餅屋にまかせて大船に乗った気持ちで福岡に帰ってきなさい」の言葉が
　決定打になった。（何であれ信頼できる友人に全て委ねる方が納得できると言うものだ）

　何よりＬＵＣＫＹだったのは部分切除になるだろうとの術前見解をもらえた事。
　多分、本文で記するこの場合の難点は出血と尿漏れだそうで術途中で
　全摘出に切り替える場合もあるらしい。
　けど自分の場合は何の問題も無く任務完遂だった。

どの程度のもの？
→退院前に主治医から聞いた話では「初期の早期発見」だったそうな。
　腎のみに限局して現在のところ肺と肝臓には転移の所見無しらしい。
　大きさは標本化した後で少々萎んでいるけれど18ｍｍ程度。
　周囲を少し余分に切除したからそれを含めると25ｍｍってトコらしい。
　悪性度として松竹梅で分類するとどんなものかと質問したらまあ
　中くらいの辛さみたい。（よくわからんなあ。。。）
　で、8/1に入院。8/3手術。8/17退院。8/20から通常出勤でしばらくは会社療養、
　つまりは当分の間、以前からと同様に怠けながら仕事しようかねと。

今現在（退院後一週間）で困っている事は？
→手術は左横腹を20ｃｍ弱開腹して＃１２肋骨を一部切断したとか。
　傷口は何とも無いけど神経痛がツライっす。骨盤あたりを軽く触るだけで痛い。
　自動車の運転でシートベルトが負担になる。。。
（Ｄｒ.ＫＴと同じく高校時代の友人Ｄｒ.ＫＨが言うには肋間神経痛の
　ようなモノで骨を切った事に由来するらしい）

　クシャミするとズッキーーン！って一撃が来るのよ。
　そんな時には事前に両手で腹を抑えて筋肉の動きをしっかり固定すれば
　痛みが緩和される事を発見した。（あんまり他の人には役に立たない経験則ね）

　退院時には乾燥してふさがっていた体内からの排液管を通した穴が
　また開いて一部に化膿した様子。炎症にならなけりゃ良いがなあ。。。

　不安要素は右人差し指第一関節痛。診断前から数ヶ月続いていてリューマチ、通風なら
　文句無いけど肺と骨が好発転移先らしいこいつの場合、遠隔転移が有ると無いとじゃ
　3年後生存率が100％近くと10％台とかで。その差は大きいや。　

　横腹の筋肉を切断した形なので力が入らない。神経も切ったためか
　開腹部傷口下の皮膚は数センチ幅で全く触感が無くてしびれた感じ。
　それとは別にヘソの横から骨盤にかけていつも痛い感じがする。

　今年度20日以上有ったはずの有給休暇残は1日。身動きがとれねえ。。。　　

総費用は？
→集計中。　多分、本年最後の費用発生は次回11月の検診。
そのうちＵＰするでしょうが一番の関心事は来年の確定申告で交通費が
医療費控除として認められるかどうか。これは還付だけじゃなくて来年の
課税額にも影響するから重大関心事なのよ。

　これ以外にも思い浮かぶ不自由はあるけど　結果的には楽なもんだから
　文句は言えないね。

　以下　2007.8.24 UP分

ということで本題よん。

＜2007.5.15＞
年間恒例行事のようなもので２月には会社の生活習慣病を主とした一元化検診がある。
毎回コレと言う結果も無くしばらくすると５月には面白半分と言う程度で
受けていたPET研究検診も今年で４回目。
これは公用外出扱いで検尿、検便、呼気成分、固視微動、X線CT、MRI、超音波にPET
と一通りの検査をしてくれるし料金も研究検診の為か一般とは別の格安扱いとくれば
やって損はなかろうと。

例年と同じく画像診断用の「絵」がちゃんと撮れたのか確認の為にしばらく
待たされた後でハイ、サヨナラ。あとは帰宅して晩酌のつもりが今回は院長から
話が有るとかで面談室に呼ばれる。
検査結果の画像が示されつつ超音波診断では左側の腎臓部位に何か怪しげな影が
あるとか。思うに超音波検診ってのは実にウマク出来たやり方でその意味と
医療診断機器として導入する費用と比べたら効果は十分だと評価できるな。

自分のような素人なら一緒に見る画面は電波の受信状態が悪いＴＶを
見ているみたいだったけれど職業の技とはたいしたものでよくもまァ
こんな程度のものが判断できるものだと感心する。
多分、観察する要所、ポイントが決まっているのだろうが実際には
右側をサラリと撫でて左側の時は「ん？」てな雰囲気で何やら
繰り返し映り具合を確かめているような。

面談では予約手続きと紹介状を作るからもう少し詳しく調べる為の病院を
決めろと言われる。そんなの急に言われても結果を予想していなかったから
即答できるわけが無い。
とりあえず後日に職場へ送付される検査結果を見てから連絡します、と言っておく。

いずれにしても自分が住んでいるような地方都市だとそんなに選択肢があるわけじゃ
ないから眼の時と同じく地元の医大病院にしておくかと　あまり深く考えずに
帰宅していつもと同様に晩酌〜。

＜2007.5.23＞
社内便で検診結果が書面として届く。当日撮影後の解説と同じくX-RAY CTと
超音波診断で左腎に2ｃｍ弱の不審物があるそうな。
判定の表現は要精査。いきなり悪性腫瘍の可能性と記されている。
その次が良性病変とか精査不要ってあるけれどもこの違いには格段のものが
あるな。丁度この頃には卒業した高校の出前授業講師を依頼されていて
自分の仕事に関わるネタとして悪くもないかと呑気に考えていたけれど。

とんでもないね。自身の病はやはり、、、たいした事じゃないと今でも思っている。
だけど後日の病院生活で患者に関わる職業の人々、医師は当然だろうが
特に昼夜を問わず患者に接する看護師の皆さんにはどれだけの苦労が有るかと
いうのが実感としてこの身にしみた。
この原稿をＵＰしている退院後の話だがYAHOO!ネタで患者の横暴、各種院内暴力が
増加しているとの記事を目にした。程度がどうであれ病を患うと言うのは
尋常な精神状態を維持できない場合が有るのかもしれないし単にワガママな
人種が増加してきただけかもしれないが自身の病状よりもこういう世相話を
目にする方が暗澹とした気分になる。。。

＜2007.5.26 ＆ 月末＞
進路別研究会なる行事の講師で福岡の母校訪問。夜には同窓会で飲み狂う。
友人のＤｒ.ＫＴと一緒に泌尿器科のＤｒ.ＫＹに検診データを見せる。
「どげなもんやろか？」即答で「おまェこりゃ早よ切った方が良かばい」だと。
結果、彼が手配してくれて後日に入院先を訪れることになるがＤｒ.ＫＹの
ように高校時代からの付き合い連中は一度も同じクラスになった事が
無い奴が多い。「博多学」新潮社刊の一項目に記されているとおりそのキッカケは
学校行事を通じての仲間であるけれど福岡での縦横のつながりは恐ろしく強烈で
今の居住地で見聞きする他校の同窓意識とは全く異質だと思う時がある。
ただこの夏にしばらく福岡に滞在して思うに友人の存在こそがありがたかった。

月末には最初に受診したPETセンターに地元医大病院で精査を受ける旨を
連絡しデータFILMと紹介状を受け取る。
予約手配までしてくれたので楽だけれどやはり病人としての実感が無い。

以下　2007.8.29UP分

＜2007.6.5＞
地元医大の泌尿器科に初受診。
ひと通りの話をしてPETセンターのCTフィルムは造影していないので
判じ難いと言う事からもう一度翌日に担当医が外来診療する別病院で
造影剤を使っての撮影をしましょう、となる。

＜2007.6.6＞
造影CT検査の為に別病院へ。
CTに横たわる自分へ造影剤を注射しようとする人は何やら自分の職場で
昨年末に入社したパートの人にどこか似ているものだから仕事の出来栄えを
連想して何か嫌な予感。。。　的中。。。
「あれ？」　　「どうしよう？」　と　ブツブツ独り言が聞こえる。
何なんだと思っていたら「針が入らない」って。　やたらと痛いわけだ。
注射する腕を右から左に代えて再注射になる。この造影剤は体に熱を
感じるという。確かに開始して間もなく喉から胸元にかけて　クワァ！っと
来る感じで闘魂注入ダ〜！　の雰囲気が。次いで股間にも忘れていた熱気（苦笑）
という不思議体験なんよ。しかしナゼだろう？？？
二週間後にFILMを受け取りその足で医大病院に行く事になる。

＜2007.6.19＞
朝8:30にFILMを受領して医大病院へ。
しばらく待合室で周囲を見渡す目に入る老人風景には痛々しいものが多くある。
人生終盤を病みながらこのような姿で日々を送らねばならぬとは寂しいものよ。
いずれ自分も本格の老人になる。その時にどういう生活だろうか。
人間最後は誰でも同じトコだが病院通いで苦労しながらというのはツライな。
気ままの気楽に思い切りの良いところで「はい、これでオシマイ。あァ満足満足」
となれば総決算日には幸福の極みだろうが。

ただし、だ。後にも重ねて記するはずで予防が無理なら早期発見の早期対処で
どうにかなるものは　そうやって自分自身の意思で手を打つべきだと思う。
例えば診断技術的に発見が可能な場合もあるなら（例えば本コーナーの題目も）
進行して自覚してから、という以前に知るべきものは知った方が良いだろう。

道楽で各地を放浪見聞していると極稀に服装や外観が年寄りらしくない爺婆に
出会う事がある。そんな時には「ほほぅ」と何か感心してしまうのよ。
今回は医大病院なのに病人とは見えない爺さんを目撃する。
歳は80くらいだろうか。伸びた背筋に膝下ズボンと白靴下＆スニーカ。
見える足の肉付きと肌の感じがスゴイなあ。若い頃に相当な修練を
積んだのだろうか？病院にいるのが場違いみたい。　やるなァ爺さん。

同じ年寄りでも呼ばれて反応が遅い人、車椅子に付き添いで生気の無い人、
違う診察室に行ってしまう人、年齢相応に衰えるのは仕方ないが
自分の生活で銭は現状でも不如意ながら身体がいつまでも自在でいられるか
というのは実は相当に難しいのかもしれない。

90分程度待って（どうにかならんかなあ、、、この時間）自分の診察。
造影画像とＣＴの所見を見せてもらう。
（この時にはその場で見ただけで内容をよく憶えていなかった）
医師との話でKEY PERSONは誰かと質問されても独り身であれば
どうにも回答の仕様が無い。とりあえず母か妹ですかねえ、と。
入院期間としては二週間くらいだと。ただ全摘出が前提だと。
自分の先入観とは全く逆で全摘出より部分的に切除する方が
手術としては面倒らしい。
この時の話では腎臓の中央付近で内側にも食い込んで腎盂と静脈に
近い事から部分切除は難しいとか。。。
（入院した九州がんセンターでも腎臓の端に生じていれば切除は楽と聞いた）
順番待ちで8月になるそうだが夏休暇をウマク使えれば良いが、と思う。

この時にはそれなら福岡だよなあ、と思うようになって夜にDr.KTに電話する。
庵主「なんとかＣＣげな」 Dr.KT「そりゃ＊＊＊やろ」と。
庵主「そら何な？」 Dr.KT「腎細胞癌のこったい」
後で調べたところでは Renal Cell Carcinomaとかで。本職ながら簡単に
横文字単語が出てくるのは高校時代と同じだなあと感心する。
（奴は医師となった後、スポンサ付きでハーバード大学の研究施設だかに
何年かいたのを今になって思い出した。昔は同じ時代を共にした友人で
あるけれど自分とは全く違う進んだ道への天賦の才を人柄と共に尊敬する）
どこが良いやろか？と相談した結果がその後、九州がんセンターとなって
訪問の段取りをつけてもらう。

＜2007.7.3＞
地元医大で造影MRI。しかしこの検査は無駄になる。
結果を吟味する事も無く転院の希望趣旨を説明して紹介状作成を御願いする。

＜2007.7.8＞
九州がんセンター初訪問の為に前泊で福岡に。博多から天神にかけての
エリアでも良かったがこういう訪問展開を今まで考えてなかったから
一種の個人的思い入れで宿は西新地区としてHYATT RESIDENTIAL SUITES。
こいつは価格対内容比で良かった。晩飯後にDr.KTとDr.KHが来て飲茶。
直接診察してもらたったのでは無いけど九州がんセンター宛ての封書をもらう。
（何を書いてくれたのか知る由もないが手配には友人ながら申し訳ない）
解散後にもう一度晩酌で居酒屋。福岡では所々で鯵の南蛮漬けがある。
これのどこが困るかというと。　　実に晩酌の相手としてウマイ！
なのに普段の地元には無い。思い出して食いたくなるのがつらい。。。

＜2007.7.9＞
自分の記録によると天候怪し、とある。　この時には先行き不透明の中、
初の九州がんセンター訪問で自分について告知に関するアンケートを受ける。
自分に関しての全ては情報として知る事ができるならありがたい、と回答する。
結局、地元医大のデータから腎ガンだろうと。次回に手術用に貯血とか。

＜2007.7.17＞
この頃は丁度連休で直前までAUCKLANDへ。帰国後はそのまま名古屋＆福岡泊で
そのまま診察へ。デイバッグ一つでいつもと違う長旅になってしまった。
福岡では西鉄薬院駅近くのパーソナルホテル　オーミヤって所に。
これも価格対内容比で十分すぎるくらい十分に良い宿だった。
庵主的に福岡の安宿志向なら相当な上位ランクしても良いかもしれない。
夜にはDr.KTから電話が来て彼の車で福岡市内六本松の喫茶店へ。
洒落た店だったが高校時代から知っていたとかで奴のイメージと
結びつかない。旧知の友人でも知らぬ一面があるものだ。

訪院して手術に備えて400mlの貯血＝随分と昔には献血していたが
随分と御無沙汰。　久しぶりだったけれど看護師さんから体調を
尋ねられ「体重が400ｇほど軽くなった気がします」と回答する。
しかしまあこの頃はロクな食事をしていなかったから量はＯＫでも
質はどうだろうかとも思う。
それでも自分のものだから他人の善意献血でも何がしかの潜在的な
感染リスクを考えたら合理的でもあるな。

その後に遠隔地からの患者だからと言うのか短期集中的にもう一度
造影剤でCTとMRIをやってもらう。
次回は結果と手術の説明、そして入院のために訪問だ。
そいつに関しては通例的にか同意と言う点で家族にも同席してもらうとか。
年寄りにこんな話をすれば必要以上に気を揉むのであろうから親へは
退院するまで連絡はしなかった。
距離的に一番近いとなれば奈良の長妹だから（それでも相当な距離だが）
ソッチに頼む事に。事情を説明すれば「へ〜」、「ん〜」、「いいけど〜」と
冷静＆淡々（兄妹ながらこの性格の違いはなんだろうと思う）と了解してもらう。

会社には月次報告の中で入院休職する旨を伝えれば元締め上長からは
「お前はホントに運がイイなァ」と言われる。
過去随分と続けてきた自場所のどこかに書いたように「足りない実力は
運と縁で補う」特別な能力が無くてもこれは自分が恵まれている点だと思う。
統計的結果論として癌にならない人は、、、絶対ならない。
しかし罹患する人は必ず存在してその比率は今後、増加傾向になるはず。
もしもそうなら楽な内に始末してしまえばそれが一番良い。
なのにその軌道を修正する機会を逃して余分な苦労をしながら不本意に
人生オシマイとしてしまう人だって間違いなく存在するはずだ。

自分がこの現実と違う場所、違う仕事、違う環境、違うすべて。
そんな生活してたら違う健康状態だったか？　それは分からない。
今現在そうなっている以上、同じだったかもしれないし違うかもしれない。
ただ現実の自分は今の自分だから。。。
これは患った結果であってもこれで良かったと思う。

以下 2007.8.30 UP分

＜2007.7.31＞
診察時刻の関係で当日移動では間に合わないから仕事後にユルユルと
名古屋に移動する。中部国際空港で前泊の場合はもう東横INNに確定。
周囲に何も無いから宿のロビーで無料インタネットを少し遊んだ後に
夏休み休暇の前祝として晩酌したら就寝。

＜2007.8.1＞
入院日だよ。
説明に立ち会う妹は福岡の友人宅に前泊するとかで病院にて待ち合わせとする。
医師から呼ばれるが妹は登場せず。。。
「じゃあ　もうしばらくしてからにしますかね」と言われて病院入口で待機する。
しばらくして無事に合流。診察室で医師から説明を受ける。
冒頭のとおりCTでは腎癌に思えるがMRIではそうとも言い切れないと。
とにかく切除になるが手術をする医師にとって一番怖いのは出血らしい。
「下の端に出来ていれば簡単なんですけどねえ」と言われても本人だって
こんな展開を希望してココに来たわけではないから仕方ないな。
ただ、表面に出ているからまだどうにかなったわけで本当に腎臓の内側（腎盂だか
腎門というんか）だと小さくても部分切除は極めて難しいらしい。
訪問前にDr.KTから部分切除で行くそうだ、と聞いていたのでまだ安堵感がある。
腎臓の摘出をするなら「二つあるからまだ一つ残る」あるいは「二つあったのに
これで一つしかない」と考えるか。事実上の意味は同じだけど日頃は何にしろ
楽観的な自分でも珍しく後者の感覚が強かった。

入院の手続きさえしてしまえば後は特に検査があるわけでもなく暇なのよ。
早速、外出手続きをして天神方面に。
この夏は猛暑が続き入院前には風呂にでも入ってサッパリ綺麗にと思っていたから
WEBでしらべた天神の隣駅、薬院のスーパー銭湯に行く。
ところが見当たらずどうやら潰れたのか空き地の工事中状態だった。。。
仕方が無いから中洲のサウナまで散歩とする。それにしても暑い。
コンビニで着替えのＴシャツ買ってようやくゆっくりと風呂で身を清めてから
チョイと入院祝いの一杯。近所の病院にいるDr.KTとコーヒーでも、と雑談の後に
病院へ帰着する。消灯時刻は22：00。朝には6:00に一日が始まる。
普段の生活とかけ離れた時差についていけるだろうか。。。

＜2007.8.2＞
特に何もなし。昼間の病室は快適だが消灯時刻以降には集中制御の冷房は
OFFになって扇風機しかない。少々寝苦しい感じ。（さすがに猛暑を記録した
入院中の何日かは夜半過ぎまで冷房動作だったが）
明日の手術に備えて錠剤と飲用の下剤を服用する（→文法的には「させられる」）
液体のは看護師さんが「柑橘系ですよ〜♪」と言うけど甘くて（自分には苦痛）
しかも中途半端にヌルイ！本当は下剤成分を湯で溶かすのだろうな。
どうせなら下剤の焼酎割りとかにして欲しかった。。。本日から晩酌は無し。
自分の不安要素の一つはもしかしてアルコール依存症かなあ、ってね。
ところがこの日以降、一度同窓会で外出した時に飲んだ以外、入院中の禁酒には
全く何の欲も苦痛も無かった。煙草についても同様で。不思議なもんだ。

明日は手術。結果はどっちだ？！

＜BREAK-1＞
さて癌診断の手法には幾つかの種類があるだろうが一つPETについて。

そもそも癌細胞はどんな性質なのか？見聞きした限り、、、
1）マトモな細胞と比べて際限なく分裂を繰り返すとか。
2）正常細胞と比べて代謝が多くて活動源のブドウ糖を消費するらしい。
このために自分の周囲に新しく血管を作るそうな（通常、成長した人体の
中では新生血管を作ることはしないとか）
自分ばかりが食うために周囲の正常細胞には十分な栄養が得られず
全体的に衰弱してしまうらしい。
結果、臓器の正常細胞が役立たずの癌細胞に置き換わる
ようなもので機能しなくなると。
3）そうやって自分の周囲に作った血管から癌細胞を体内にばら撒いて
ウマイ事、他の場所で定住するとそこでも同じ様に振舞うことに。
（転移と言うやつやね）

何が困るかと言えば癌細胞でも発生元の細胞組織と同じ様な機能をすれば
良いのだろうが全くの役立たず状態で何も仕事をしないで他人（正常細胞）の
食い物まで弱らせるとなれば全体的に衰弱死も避けられないというわけかも。

PETはしばらく以前のNEWSネタで効果に疑問が呈せられた事が有った。
つまりは検診結果で実際の癌症例を見落とした例も多いと。
これは「当然の結果」で記事にした連中は何かPETを万能な癌検出器と
勘違いしているのなあ、と。（PETに限っては少なくとも単に取材で記事にする
素人より自分のほうがどう考えても近い位置に居ると確信してますんで）
原理は上の2）、代謝の程度がどうなっているかを応用しているから
正常な細胞に比べて「異常な代謝量」を検出するのがPETの機能と言える。
だから正常な細胞では比較的血流の少ない部位、例えば乳がんや肺がん
に対しては有効だけど血流の多い組織＝自分の場合のように腎臓あるいは
標識が尿となって排出されるので膀胱や前立腺には不向きになる。

重要なのは検出手法の適、不適から効果的な検査を組み合わせる事だと思う。
情報の発信源として記事とするなら書き手は興味本位の話題ネタだけに
するだけでなく十分な予備知識の習得をするべきだろうが現代では
必要な裏付けをするより「記事がウケルか？」の方が売り手にとって
重要視されていると感じられる。だからこそ情報は受ける側がその
真贋を判断する注意深さが必要なのだろうなあ、って思うんだけどね。

＜2007.8.3＞
さあァ！！！！！手術日。

当日は二番目ということで昼頃に手術となる。
自分で順番を決めるわけじゃないけどこの位が丁度良いかな。
朝からだと術後の時間経過がどうにも長いと思う。
当日の手術後に思ったことは。。。「早く次の日にならないかなあ」と。

朝の行事は浣腸。昨日に下剤服用して腹の中は純空のはずなのに
看護師さんからトドメの一撃的に。効果が確認され次第、報告せよと
指令を受けてトイレに行くけどその場所が満員だったらどうするんだろう？？？
結果は　もうシチュー状態（うぅ、カレー食いながら見てるなら失礼！）看護師さんも
「これならダイジョブですね〜」と。
その後、心電図の電極は太ももにつけるとかで左側を処置室にて剃毛する。
本当に大変な仕事だよなあ。。。

いよいよ呼び出し。
移動前には両足に練馬変態クラブ風 by 山上たつひこ@こまわりくん風の
ストッキング装着。こりゃ何ですかね？と質問したら一種のエコノミークラス
症候群防止用のものだとか。術後には感覚が殆ど無かったけど太ももに
ストッキング内部でグリグリとマッサージ機が動いていたような。

ストレッチャーなる横寝の荷車に載せられて手術室へ。
目に映るのは天井が移動する様子だけ。

開始。最初に横向けになって丸くなれと。背中に麻酔針がたくさんの雰囲気。。
ゴジラの背中みたいになっているんかなあ、などと想像する。
背骨のあたり、歯科治療で受ける麻酔注入みたいに嫌な感覚だなあ。。。
そして吸入器を装着する。時刻を尋ねて記憶に間違いなければ12:53と
教えてもらう。　いよいよ、だ。

。。。。
。。。。。。。
。。。。。。。。。。

終わりましたよ、って　遠くから呼びかけられるように目覚める。
多分、　本当のところは　「起きんか！　ゴラァ！！」って感じで
バシバシ叩かれてたかもしれんなあ（苦笑）
でもまあ第一声は「何かイイ夢見ていたような気がします」って
間抜けなコメントをしていた気がする。

病室に戻ったのは16:30頃だったらしい。
とにかく三年半前の網膜剥離手術を思い出す。
夜がつらい。体中に違和感がある。
手に点滴。下腹部に導尿管。脇腹には手術後傷跡＆排液管。
背中には鎮痛用のチューブと、、、人生（笑）
加えて夜の寝苦しさ。

検温では手術後に一度だけ38℃を超えたけどその後は殆ど平熱だった。
気分も入院全般を通じて順調の上機嫌。
しかし術後と翌日の８月４日は記憶が無い。
術後、病室BED上にてレントゲンを撮るとかで看護師さん何人かに
掛け声と共に　抱えられて装置上に乗せられたのを何となく憶えている。
背中にゴツゴツとした違和感が有った気がする。
気分はどうですか？と質問されて「（看護師さんに囲まれて）王様に
なった気分です」と答えていたような。。。
自身の状態より何でこんなアホみたいな返答を記憶しているのだろう？

＜2007.8.4＞
麻酔ボケだかよく憶えていない。屁が出ないと水も飲めないとかで普段は
体内で食ったものを完全燃焼しているように排気ガスには不自由しないのに
意識していると難しいもんだ。それでもいつの間にかどうにかなる。
この日の感想は「よくこれだけ寝られるものだ」となっている。

＜2007.8.5＞
昨日に比べたら全身に力の入り具合がかなり良くなったような。
ただ配管が何本もあるので歩く事も出来ず退屈してくる。
昼から粥の食事で術前に最後の晩餐から何十時間経過したのだろう？？？
箸を使って喰おうにも脇腹に痛みがあって意地で食べているようなものだ。
食事ではBED上でも座しての姿勢は内臓を圧迫するのかしばらくすると
脇腹が痛くなる。こうも苦労するなら飯もいらんなあ、って気分だ。
首からネットに入ってぶるさげていた鎮痛剤のシリンダーから背中に
行っている一部を昼過ぎに外す。

昼にDr.KTが見舞いに来る。入ってくるなりBEDに投げ出した足裏を
くすぐられる。バカヤロー！笑うと傷が痛い。その後に友人の山漢Ｙ氏も。
折角来てくれても心身共に不自由なれば申し訳ない。。。

夜、背中が痛痒い。触ってみると虫刺されのような状態に感じたが
針を抜いた跡の様なものだろう。食事を始めたせいかやたらと屁が出る。

＜2007.8.6＞
昨夜はやたらと寝苦しかった。そのせいか寝不足感が朝から強い。
寝起きに咳をしたら手術部周囲に強烈な一撃の感じで腹部周囲が痛む。
朝食前に医師の回診となる。導尿管は外して歩く練習をしましょか、と。
以降は尿瓶を使って量と出血有無をみていくそうな。
ちなみにこのシビン。計測器のようなものに流せば量と比重が測定
されるようになっている。大体、量として大きな変動も無く体の中で
一定量になると排出指令が作動するようになっているのだろう。
そいつは大体、400ｍｌくらい。健常な状態なら面白半分で貯蓄記録に
挑戦〜、とギリギリまで我慢したかもしれないが病み上がりなら
無理は出来ないかとあるがままだった。それに記録達成でも
結果の数値が異常と判断されても困るから幻のプランだな。


遂に歩行開始だ。しばらく歩き回る。点滴架台で輸液ポンプの
バッテリー切れ警告が出るまでね。そうなるとBEDに戻ってコンセント
につないで充電し適当な頃合にまたフラフラと院内探訪の散策へ。
昼には背中の鎮痛チューブと排液管（術部周囲の余分な体液を
抜き取り治癒を早めるようなものらしい）も取るとか。
こいつは直径は1ｃｍも無いのに見たところ長さは結構、体内に
入っているなあと言う感じで。これなら痛いわけだと納得する。

何の注射だか大きいのを看護師さんが持ってきてドキドキ。。。
直接の注射でなく点滴ターミナル経由と言うことで安心する。
しかし夕方ころから特に背中、切開周囲、太ももに相当な程度の
痒みと発疹が出てくる。医師、看護師が言うには薬疹だろうと。
前回の入院記録（網膜剥離の時）を読み返すと手術後三日目からで
今回も同じTIMINGだった。手術に関する薬物の何かに対して一種の
アレルギーみたいなものが有るのかもしれない。
アレルギーのようなものだろうか？三日目と言うのが不思議だ。

＜2007.8.7＞
前夜と同じく総じて寝不足。連日熱帯夜の雰囲気でもあり消灯以降は
冷房もOFFになるようなので寝苦しさのようなものが確かにある。
しかしこれは気温だけが原因ではない。
不用意にクシャミをして又も一撃を喰らう。夜中に起き出して
トイレに行く際にもまだ痛い。（術後以降、夜半のトイレ訪問が
しばらくは恒例行事だった）部屋に戻ればすぐに当直看護師の人が
大丈夫かと声をかけてくれる。具合がよく分かるものだと感心すれば
歩き方で分かるとか。尚更に感心する。

別コーナーの庵主の迷想的に考えると、で重ねて書けば入院先の特徴柄、
自分の痛みなんかは全員の中で比べりゃあたいしたもので無いはずだ。
それにしても久しぶりに世話になれば日常生活では想像する事も無かった
看護師とは本当に御苦労の多い仕事だと思う。
昨今では医師のみならず看護師も不足傾向にあるらしい。
入院中に読んだ何冊か遠藤周作の本で述べられているように
待遇にはもう少し配慮されるべきでそれだけの意味がある職業だと思うが。
入院中に徘徊した病院の片隅で看護師組合（？）からのような掲示を
目にしたがこの職業にも査定や報酬に厳しいものがあるとか。。。

腹立ち紛れに思うと議員や官僚も利権や金集めに走るその精神状態より
身体を一度でも病んで国民と同じ病棟生活をしてみればよいのにな。
ただアノ辺で話題となる連中は人間が懸命に働くと言うその事自体に
鈍感なのか。そうでなきゃあんな税の使い方や失言は。。。
職を通じて尽くすという姿勢を学んで見ろ！なのだが。

で、午後から点滴も外してＯＫとなる。これで体から配管類が全部取れた。
夕刻に入院時最初に面談した医師が部屋に来て少し話をする。
速報的所見として摘出した嚢胞の部分に癌細胞が見られたとか。
入院前に妹と共に話を聞いた際、癌かどうか50/50だというのを聞いて
何とは無しに癌じゃない方を期待するような心境も少しばかり有った。
でもまあこの結果はこれで良いのだな。
これは単に自場所、暇つぶし空間の記録でしかないけど万一にも
将来に（今ではなく）患者になる人間が偶然、ここを目にして
早期発見になる何かの手を打てるキッカケになったとしたなら
それだけで何かの意味が有ると思うのだが。

直接の主治医が夜になって来る。腹筋に沿ってではなく切断する形で
メスを入っているそうな。あと二、三ヶ月は痛みが残るだろうと。
ガッカリ。

それにしても、だ。
多分、自分の場合は癌と言う病が死因構成の相当比率を占めていること
から見ても放置していればいずれ自覚が出る段階まで進行していた
と思う。そうなると通院、治療、身体的な負担等々で生活の質は
今回とは比較にならぬほど相当低下して気楽な暮らし（物的ではなく
第一に気分的に）をすることは極めて困難になっただろう。

実際、夢のような何かの感覚で「天意の寿命を人の技が変えて
しまいおったわい」という声を聞いたようなのがどこかの意識に
残っている。この先将来に再発、転位があるかなんて自分だって
知ったことではない。だとしてもそれは将来のその時のこと。
当面の問題を切り捨てた今は「ざまァみやがれ！」ってなもんだ。

以下2007.9.4 UP分

＜2007.8.8＞
入院からやっと、と言うかもう、と言うか一週間になる。
この病院の性質上（？）身体だけでなく精神的な安心安楽感と
いうものだって重要になるのだろう。ここでの生活も一週間とも
なれば病院のSTAFFとも馴染んでくる。てか、看護師さんの世話に
なる以前に見ているだけで自分の気分が和むなあと。ははは。
医師との会話で明後日に抜糸、しばらくしてから退院直前のCTを
撮って自分の夏期休暇中には退院だろうと。（ありがたや）

入院時には普通の４人部屋だったのが手術後は酸素吸入、心電図や
身体状態モニタだかの必要からか個室部屋となっていた。
昨日に看護師長さんが来て今までは術後の様子見で個室だったけど
本日あたりに入院時の部屋に移動となるかも、と聞いた。
実際には次に手術をされた方がそのまま集中治療室に行く事に
なったらしくてしばらくはこのまま個室状態を延長できるかも
知れないし突然の移動を頼む事になるかもしれないのを
承知してくれ、とのこと。　文句が有るわけも無い。
結局、退院時まで個室状態だったので気楽にできたが　もしかして
自分はこの病棟の中でも相当軽度だったとも思うから他の程度が
重い患者に対する配慮による一種の隔離策だったのかもしれないな。

ただ傷の具合は自分も今ひとつ。
本日はBED座っているだけでも痛みが強い。

ちゅうことで　TO BE CONTINUED　ね。

＜2007.8.9＞
目覚め良し。痛みもゆるくなった。
昼飯後に定例の院内散歩でエレベータに乗り合わせた医師が
手にする紙片をチラリと覗き見る。緊急処方「麻薬」とある
（モルヒネの様なものか？）そんな状態に比べりゃ自分のは
本当に屁のようなものだ。

屁と言えば、、、食事開始以来、屁には困らなくても本体排出には
程遠くて病院食とは別に牛乳１パック＆ヤクルトジョア２本を
暫定処置として飲用していたが効果なし。てか、腹全体の運動力が
まだ弱いような。。。

この日の最大イベントは長崎からりあさんが見舞いに来てくれる。
元々は既に廃止された村仲間と称する某h社のHPからの付き合いだけど
自分が良かったと思う一つにはこんな自場所からでも知らない各地の
知らない人たちを知る事が出来た事だな。北海道、茨城、東京、広島に
福岡、長崎。古い人（？）だと６年以上にもなるのが面白い。
豪華見舞い三点セットで読みたかったミヒャエルエンデの本、四海楼の
チャンポンと長崎名産「からすみ」（どれも嬉しい。からすみは退院後の
祝い晩酌に使おうと思っただけで退院が楽しみになる）
しばらく話をするうちに高校仲間のDr.KHも見舞いに来てくれる。
彼は自分と違って所帯持ちなのに翌日からマチュピチュまで
単独旅行をするとか。行ったついでに一週間で東回りの世界一周だと。
自分も気ままに出歩く性分なれどこの点で「コイツだけには勝てん」
が昔から今でもそのまま。

彼が言うには腹の痛みは傷より骨を切った事からだろうと。主治医も
そんな事を言っていた。傷をかばう意識で腹に力を入れるのが
怖かったのかもしれないがこれで排出する気分になるだろうか？

夕刻前に別病棟で盗難発生とかで看護師さんが注意喚起に来る。
入院患者は老若男女様々だったけど一定レベルを超えた年寄りの場合
「初めっから無いモノ」を「無くなった」と思い込む場合が
有るそうだがいずれにしても注意するに越した事はないだろうな。

＜2007.8.10＞
入院して10日目。　手術前夜は台風５号のせいでどうにも荒天だったが
それ以外は全て好天だ。朝焼けの空に鮭の切り身のような雲が浮かぶ。

ここまで自分で意外だったのは酒と煙草は中断してソコソコの日数に
なるのに渇望する事も無く特に酒は退院後の晩酌が楽しみだなあ
という程度で。
しかしこんなのも退院後には体調と同じく全て元になるに違いないだろう。

朝に抜糸となる。昼過ぎに面白半分で観察すれば縫合されていた端が
下手クソな餃子のように少しはがれて皮下脂肪のようなものが見える。
これからはシャワーもＯＫとの事だったがこれじゃ体内に湯が入りそうで
回診時に医師に言えば防水パッチみたいなのを貼ってくれる。
傷はその内にふさがるとの話で「マアそんなものか」って言う程度の印象。

ともかく今までは傷をかばっていたためか腹筋が衰えたのか喰っても
出てこない。看護師の娘さんにその点の具合を質問され「1勝4敗って
とこですかねえ」と言えば即座に「ココは勝ちにいきましょう！」と
（なんだかすごいコメントだなあ。でも普通にそう言う看護師さんはイイネ）
酸化マグネシウムの散剤を持ってきてくれる。こいつは中身をやわらかく
する効果があるらしいがさすが本職だ。夕刻には多大な戦果。
さながら水面に浮かぶ大艦隊の如し。ウ〜ン、スゴイ景観だ（苦笑）

手術後に略儀ながら診察、入院に手配の労をとってくれたDr.KYに
礼の葉書を出した返事が来る。この病院の医師は皆、Pro中のProだから
安心しろと。今更ながらありがたい。P.S.として自分の為に本当に
動いたのはDr.KTだからそれを忘れるな、と。最後には病院名でなく
10組だったKY、と書かれている。自分は別の7組だったが傷以上に
昔の友人らの気遣いがまた何か痛い。

病院食とは別に院内の食堂で初めて皿ウドンを食う。
こんな状況だと感動のウマサ。

夕方にＴＶのNEWSで城南区の田島三丁目あたりで火災発生だとか。
昔は５丁目に住んでいたから近所やね、と思いながら病室より
野次馬魂で外を見ればその方角から煙が見える。
福岡市内の距離感を今では把握できないものの病院から近所では
ないはずなのにそれほど遠くもないのだなあと何か懐かしい。
（被災者にはスマンでも）

＜2007.8.11＞
手術待ちの家族用らしき中央待合室というのはTV（この時期は高校野球の
季節で訪問した場所＝九州勢が健闘しこれも退屈しなかった）それ以外にも
各種の医学誌とは違う小説＆娯楽本が多く有って退屈しなかった。
S.KINGのグリーンマイル全６巻を発見。DVDは観たけど小説を読めば
CASTINGをウマクやったもんだなあなどと思う。コレ以降、待合室も
暇つぶし場所になる。
この段階では傷口よりその下の痺れた感じと痛みの方が気になるが
神経痛とはこういうものかと納得ね。
腹筋がどうにもダメで鼻をかむにも「ふぃ〜ん」って全く力が入らぬ。
それなのにクシャミをしたら痛いの何のって。。。
手術後初めて風呂（でもシャワーのみ）隣の爺さんと雑談する。
爺「検査に来たんね？」　庵主「いェ、手術ばしたとです」
他にも耳に入ってくる話を聞いてみれば自分より楽な人は少ない様子で。
ココに来るには自覚の有無がホントに将来の分岐になるなァと。
昨日に続き院内食堂で高菜チャーハン。やっぱりうまいなあ。

＜2007.8.12＞
相変わらず傷口から数ｃｍ離れた一帯には正座後の麻痺したような感覚と
腹の左半分には常に張ったような鈍い痛みがある。
が、もう寝ていて身体の向きを変える、起きる等の動作については
特別な心配をする事も無くなった。この一週間での回復具合は一日ごとに
絶好調〜♪ってな感じだ。
病棟の窓から見えるのは何の変哲も無い風景だがここが福岡なればこそ
それだけでも気が休まる。
退院後に東京に寄るかとも思ったが結局、博多駅近くのビジホを二泊予約
してしまった。夕刻近くに山漢Ｙ氏が村上龍の「半島を出よ」を見舞いの品に
来る。おっと忘れていた。明後日の同窓会に外出願いを提出する。

＜2007.8.13＞
入院して初めて起床時には曇天。しかし結局は暑い一日になる。
目覚める度に良化しているようだ。今では自分の病や傷よりも煩わしかった
背中の痒みも少しずつ消えていく気がする。
ソレより神経痛の方が不快感が強い。これで済めば儲け物だろうが。
寝てばかりなので運動不足を実感。相変わらず上手に鼻がかめない。
しばらく前から院内散歩はエレベータを使わず階段とした。
衝動的に駆け上がりたくなり４階まで腕時計の計時機能ＯＮで階段ダッシュ。
17″417。だめだね。しかも急に腹が張る感じで少々痛い。馬鹿みたい。

相変わらず腹筋に力が入らないから上手く鼻がかめない。
夜には痒みで目が覚める。（殆ど問題ないレベルだが）
手術後１０日もすれば寝る際に姿勢を変える事も気にならなくなった。
時々、いつもの左側を下にすれば傷口を引っ張られる感じがして
まだ怖い気がする。でもまあ、それ以上に神経痛の方が厄介だな。

＜2007.8.14＞
外出の日。５月の時は同窓歴代総会だったので相当な大仕掛けだったが
今回は自分達の代だけの同窓会だから博多駅近くで小さく。
14:00からの外出申請から随分と繰上げで出発する。
天神からDr.KTと待ち合わせしてタクシーにて案内状記載の住所を
頼りにして到着した会場は宅地の中で看板も無くてこれでは店なのか何だか
分からない様相だった。しかし幹事も良くマァ開拓したもので内容は十分。
初めてアワビのシャブシャブなるものを食する。じゅん菜を浮かべ詰めた
ツケ汁にサッと通してね。普段と違って飲むと語るに忙しくて喰らうは
あまりしなかったのが惜しい。同窓会とは昔を懐かしむような雰囲気が
あるけれど主題は老後の茶飲み友達に出会う、とかで現役時代には
知らなかった同窓生と新しく知り合うのも良い趣旨だと思ったっけ。

二次会は天神の先輩の店へ。噂で先に腎摘出をしたという同窓生が別会合から
合流すると言うので会ってみたかった。話をすれば患部は7ｃｍほどだったとか。
（予後を考えると微妙な大きさだと思う。）癌の中で腎臓はそれほど多い比率
ではなかったと記憶しているのに同窓生の中で二人「も」いるとはどうした事か？

ふと携帯を見れば病院から何回も着信している。全く気がつかなかった。
てか、とっくに外出届で申請した帰着予定時刻を過ぎている。。。。
一瞬で時が経過した結果がこれでTAXIで戻る際にも電話が来て平身低頭。。。
病院には消灯時刻の随分と後、23：30頃だったかに到着で看護師詰め所に
報告するにも恐縮で。病院にしてみれば、世話をしてくれる看護師さんの
立場なら患者が予定時刻になって戻らなければ状況を確認するのも当然かも。
とにかく申し訳ない、だった。後にDr.KTに話をしたところ「問題患者ＬＩＳＴ」
に載るぜ」と。そんなのあるのか？しかしそれでもやむを得ぬな。。。

＜BREAK-2＞
さてさて久しぶりの入院生活だったためか準備その他全てが不十分で。
体験的に思った事をいくつか。

喫煙者なら煙草は手術できれば前々日、あるいはそれ以前からやめたほうがいいね。
麻酔と何か関係があるのか咳や、痰の原因となるそうだけど本当だった。
これがまた気持ち悪いのよ。

特に単身者なら自分で好む小道具を事前に選別しておく方がいいかも。
入浴セット、食事の道具、暇つぶしネタ、睡眠時の衣類etc...

虫歯は普段から治療しておいた方が良いみたい。麻酔器具で前歯や口腔を痛める
場合があるらしい。

入院先は治療目的とその技術が第一だろうが事情が許す限り滞在（入院）中も
気分的に静養できる環境を選べる方が良いな。

外出するなら門限は守れ！自戒せよ！！（苦笑）いっそ外泊とした方がイイネ。

食事は至ってシンプルなので特に好みの副食、調味料の類があれば事前に購入を。
で、入院前には手術準備の排出補助として野菜を多めに（？）

＜2007.8.15＞
昨夜の門限破り後熟睡のおかげで入院後初めて夜間に目覚める事も無く朝となる。
しかし心が痛むなあ（本当）看護師さんからも朝に一言、釘を刺されまする。
後から看護師長さんからも。ホント、ゴメンナサイだ。

夕刻近くに高校時代の友人PIANISTが見舞いに来てくれる。ありがてえ。
同じ組にはなった事無いけど運動会の打ち上げで彼の家に泊まりに行った時
畳の部屋に平然とGND PIANOが置いてあって余興に弾いてくれたショパンを
強烈に憶えている。県大会で他の同級生と1-2FINISHの頭だった彼はその後全くPIANOと
縁を切ったそうな。二番目の友人は本格のプロになってチャゲ飛と共同作業
したりCDを出して今も現役とか。人の才能が生活の方法、その人の生き方と
どのように関わるのだろう。それなら自分の持ってる味とはどんなものだろう。

主治医から「まとめの話」を明日夕刻にするとか。これも楽しみ。
脇腹に残る排水管の穴はもうバンドエイド程度でよかろうとなる。

＜2007.8.16＞
実質的に最終日。明日は退院だ。　
しかしその後は有給休暇の残日数から年度末までズル休み無しとなると
かなり厳しい。患者情報室なる各種病状に関する書籍やＰＣ設置の部屋で
WEBから１０月の連休に香港、マカオを予約購入する。首尾良く行けば
これが退院後最初の快気祝いになるか？

午後にCTとレントゲン、検査に備えて昼飯は抜き。終了後に後半の恒例となった
病院食堂でチャンポンを喰う。今回一連の説明を受けた後に次回の検査は
３ヵ月後の１１月とか。最初から最後まで病状のみならず病人として
自覚の無いまま退院となる。

「概算入院料のお知らせ」なる書面をもらう。これを明日に窓口で支払い
確認書を病棟看護師に渡せば手続き完了と言うわけだ。

最後の夜に。。。も一度４階まで階段ダッシュ。冷静に考えれば他の患者さんにでも
衝突すればトンデモナイ事で。最後まで無節操か。
15″509。歳相応に凡庸な記録でも痛みは無く復調気配。
何よりも身体を動かせる事が嬉しい。

<2007.11.16-19それと12月になって>
夏以来、暑いと文句を言いながら漫然と過ごしていた季節がいつの間にか
着るものも長いのに袖を通して寒くなったもんだと言葉にする。
この週で退院から三ヶ月となり福岡＋αで再訪問になる。

ＣＴの結果を見るに病巣だった部分がポッカリとくり抜かれた様子で
一層不気味でもある。在った物が無くなったのだから穴のように見えるのも
それはそういうもので主治医は当然の事ながら治ったとは言わないんだなあ。
まあ、その方が正直でヨロシ、となるだろう。
今回のCTで？？？だったのは腹の内側に血流の無い場所（造影剤が入って
いないから黒くなっている）があってこれも何なのだろうと。
腹の外観は縫合した周囲に肉が寄っている様な不恰好さでこれは皮下脂肪とも違う。
入院当初、看護師さんが起き上がる自分の腹を見て「わ、凄い腹筋」と
言ったのが術後は全く別物になってしまった。今も起き上がりを試みても０回。

腎癌の場合は相当な年数経過後に転移再発も可能性としてあるそうで
今後しばらくは半年事に様子を見るそうな。
次回は来年五月連休後となったので気候の良い時期に福岡再訪でもあるから
も一度壱岐のウニでも喰いに行くか、とか余分な道楽の方が後になると
頭の中に浮かんで来る。
いずれにしても自分の体内の出来事だって自身でコントロールできる
領分の話じゃないからコレについては必要以上に考えるというその必要が無い。

主治医との面談趣旨として今後は肺と骨への転移を見ていくらしい。
もしもそうなれば現在の医学（あるいは医療技術というのか）では抗がん剤
の効果は十分に期待できないのが現実らしいから延命よりも生活の質に重点を
移すことになるようだ。確率というよりも単なる統計的に何十人かに一人が
そういう事もあるという程度の話だ。無理に意味をつけるなら時として現実
というのはタダの冷たい数字ひとつで表現されてしまうものだなあ、という程度。
第一に自分がそんな展開になるのかどうかなんて現時点では自分にも全く分からない。

ただハッキリしているのは現状のこれはこれで良くて最善の経過を辿っている、
ということだ。
およそ病に限らず落命に至る事故や事件の類は当人に予見できないのが常である。
勿論、この先自分自身がそのような災禍に関わる可能性もある。
そういうものに関わる人、そうでない人（この場合の究極の結末は老衰であろう）
は当人の意思とは無関係に結果として決まっている。
今後、定期的な検診を重ねる内にもしも自分の場合に今回の件が「最後の放浪」への
切符となるなら予め覚悟を決める時間が得られるだけ儲け物で自分の生活が
まだまだ続くと思っていても唐突な幕切れを迎えるよりマシと言うものだ。

人には生きていく時間の中で思いもかけぬ出来事に遭遇する場合がある。
そのために大袈裟に言えば人生の方向や計画が狂ってしまうと思うか
その人生の中で起こり得る一つの場面として受け止めるかは各々の世界観だろうが
この自分の病に限っては「だからといって思い煩う理由が無い」なのであり
むしろ身体が自由なうちに納得できることをすれば良い、と思える機会になった。

こうして現在のところは一種の余裕のように書けるのも間違いなく病になりながら
自覚の無い段階で発見されて一応の処置が出来たからこそとなる。
病に限らず重篤な結果になる物事は、早期に発見と処置が出来れば幸運というものだ。
遅くなれば経済的、身体と精神的、時間的に負担が重くなるのは間違いないだろう。

一体、どこの誰がこんな場所をwebで目にするかは知った事ではないが
それらの人の中であるいは健康と思いつつ実際は庵主と同じく無自覚のまま
何かを持ったままの人がいるかもしれない。
誇大な物思いでなく体験的に癌とはそういう場合も有るということだ。
年に何回もの必要は無い。単に体験程度の感覚で一度は検診を受けるのも
悪くないと思う、てか健康と思っている人にこそ是非とも勧めたい。
病院で自分が直接見聞した体験や医師である友人との話の中で考えるに
癌というのは自覚（症状）の有無で全く違った世界になると感じた。
こんな暇つぶし空間の中で本コーナーに主題と言うものがあるならこれになる。

ついでに書くと受診しばらく前にはガン保険に加入しておくのもイイだろう。
（それこそ文字どおり保険と言うものだ）
人間は物事に遭遇した後で何かと理由付をするものかもしれないが
今年の始めに会社で医療保障やガン保険の案内パンフを見た時に
少しばかり何か気になっていたのがそのままで結果的に今回の展開と
なってしまった。一つだけ悔やむとすればあの時加入していれば保険金
（診断見舞金の類）でもう少し道楽を楽しめたのになァ、ってことか。

それから広告の類で目にする健康食品の広告宣伝。これはひどいものだな。
根拠とその裏付けを示さぬまま「これで癌が治癒した」って類のやつ。
記された文言は冷静に判断すれば到底、その謳い文句は信用できるに
足りないものなのに追い討ちをかけるように正体不明の体験談まである。
効能の因果を整然と説明できないものを藁にすがる患者に詐欺まがい手法
で販売しているようなもんだ。反論する業者がいるなら是非とも具体的な
解説を願いたい。こんなのは溺れる者にとどめの鉄槌を握らせるようなものだろう。
（本人が望む限り別の延命手法が有った可能性を無意味な商品に頼らせると言う点で）

とにかくこの場所はこれで区切り。
いつまでが自分の持ち時間で　何をどれだけできるかなんぞ
自分だって知った事ではないが　それもアタリマエ。　
それにしたって眼をやった時と同じく「生きて楽しんでこそ人間」ってもんだ。